店舗デザインと聞くと、ぱっと思いつくのは、「見た目をおしゃれにする」という事だと思います。空間がどんな色でどんな物を置いているのか、なんとなく「見た目」がイメージとして先行してしまいますよね。
ですが、実は「店舗デザイン」というのは、細かく言うとお店の中の見た目のデザインはもちろん、外観や「レイアウト」、更に言うと「オペレーションの仕方」や「ターゲット選定」も含まれています。
「お客さまが集まってリピートしてくれるのはどんな店舗か?」
それを考えて形にしていくのが「店舗デザイン」です。
そして、「ブランドコンセプト」と「お店の内装・外装」と「レイアウト」がマッチしていて、かつターゲットに的確に響いているお店が、「お客様が集まってリピートしてくれる店舗」だと思います。
また、「内装・外装」に関していえば、壁や床がどんな色かだけではなく、その空間の光の加減などを含め、トータルの環境作りが大事です。
なぜなら、それらとお店の商品の「単価」は密接に関係してくるからです。
今回は、店舗をデザインする手順と、業界ごとの事例をいくつか紹介します。
目次
店舗デザインの流れ5つのステップ
店舗デザインをするにあたって、まずは何から始めればいいのでしょうか?
ステップとしては下記です。
①コンセプトをきめる
②ターゲットを決める
③やりたいことを取捨選択する
④単価を決める
⑤中にいる人の動き方を考える
順番に説明していきます。
①コンセプトをきめる
まずは何を始めるにも一番大事なのはコンセプトです。自社が何を強みとして、他社競合と戦っていくのか、差異化をするためにも最も大事な柱となります。
例えば「地域に根ざしたカフェを作りたい」と思った時、「コミュニケーションを大事に出来るカフェ」をコンセプトに掲げたとします。
そうすると、例えば「地域のイベントの時も貸し出せるスペース作りをしよう」とか、「お客様と対面で話せる場所を作ろう」など、次にしたい具体案の道筋が見えてきます。
②ターゲットをきめる
次に、ターゲットを決めて行きます。
上記の「コミュニケーションを大事に出来るカフェ」だと、色んなターゲットが想定できます。
例えば大学生などの若者を集めるお店にするのか、ママ友やパパ友等、ファミリー層の憩いの場にするのか、高齢者層の寄り合いやミーティングの場にするのか…
それによって、お店の雰囲気作りやレイアウトも変わってくるはずです。
若者層をターゲットにする場合は、ある程度カジュアル感があり、かつ流行り廃りを考慮した雰囲気作りをする必要があります。
ファミリー層を意識する場合は、ベビーカー用にバリアフリーにするケアや、小さい子供でも安心な座敷タイプのエリアを作ったり、店内の色合いは柔らかな雰囲気にしたりといった考慮が必要です。
高齢者層をターゲットにする場合は、バリアフリーやトイレの配置、椅子の質への配慮が必要ですし、雰囲気は落ち着いた感じにしたほうが良さそうです。
つまりターゲットを誰にするかによって、お店の概要が結構決まってくるのです。
ターゲットの選定については、お店を出す場所の地域性や、競合店舗の調査などで、集客の可能性を考慮して考えていく必要がありますが、自分の得意分野で勝負していくのもいいでしょう。
③ やりたいことを取捨選択する
さて、ターゲットが決まって、だいたいのお店の方向性が見えてきたら、次は自分のお店でやりたい事の詳細を考えていきましょう。
コンセプトを考える時に、どんなお店を目指すかはある程度考えているはずですが、今度は具体的な詳細をつめていきます。
例えば、イベントを開催出来るカフェにしたいと思った時に、それがどんなイベントになるのか、などです。
例えば
・気軽に展示会が開催出来るように展示スペースを作る
・お酒を提供出来るように営業許可をとってパーティの二次会などに使えるようにする
・演奏が出来るように設備を整える
・ヨガやものづくりなど、体験イベントが出来るようにする
・子育て支援イベントが出来るようにキッズスペースを作る
・ペットも一緒に集まれるよう必要設備を作る
・ミーティングに使えるようにプロジェクターを用意する
など、具体的に考えていく事で、お店にどんな設備が必要なのかが決まってきます。
また、それ以外にもテイクアウトが出来るようにするか、個室を作るか、物販をするか、トイレは男女別かなど、細かいところでお店の作り方はかなり変わります。
こうやって具体例を考えていく時、ターゲットによってある程度内容は変わってくるはずなので、あれもこれもと欲張らず、自分がターゲットとする層に本当にそれが響くかどうかをよく考えて、やりたいことを取捨選択していきましょう。
たまに、「自分がやりたい事」と「ターゲットが求める事」の行き違いが発生する事もあるので、ここは時間をかけてしっかり考えたほうがいいでしょう。
④単価をきめる
お店の中で提供するものが決まってきたら、次は単価を決めていきましょう。
単価は、経営的な面でも売上・収益を決める上でかなり重要ですし、内装の雰囲気も単価に合わせて変えていく必要があります。
例えば、単価を安くして回転率を高めたい場合は、店内は明るく、椅子は座高が高めの椅子を選んだほうが良いです。
また、単価を高めに設定して、ある程度ゆっくり居座ってもらうお店にする場合は、店内は暗め(または間接照明を用いて)、椅子は深く腰掛けられるタイプのものがいいでしょう。
白っぽい色の光は人を行動的にさせ、オレンジの光は人をリラックスさせます。
また、昼間の太陽のように真上から照らす光より、横からさす間接照明や壁掛け照明の光のほうが人をリラックスさせます。
このように、単価やサービス内容によって、お店が与える印象も操作していく必要があるので、どのグレードのお店にするのか、しっかり考えておきましょう。
⑤中にいる人の動き方を考える
だいたいの方向性、イメージが固まってきたら、最後にオペレーションの方法を具体的に考えていきましょう。
例えば、どこが出入り口で、どこで商品を頼んでどこでサーブするのか、お会計はどこでするのか、セルフサービスは利用するのかなどです。
また、スタッフが何人働いていて、休憩時間はどのように過ごすのかなども考えます。
実は、お客様やスタッフが店内でどのように動くのかという「動線の設計」はかなり大事です。
人の流れが円滑に出来れば出来る程、サービスを受け取る側のお客様も、働いているスタッフも、ストレスなく過ごす事が出来るようになるからです。
それはつまり、居心地の良さや、働きやすさにかかわってきます。
動線が悪く店内での動きがストレスフルになると、お客様は「使いづらいお店」「サービスが悪いお店」と認定し、スタッフは「働きづらいお店」と判断するでしょう。
そうならないためにも、しっかりとお店の中にいる人の動き方を考え、それに合わせたレイアウトやサインをプランしておく必要があります。
業者に設計をお願いする際は、どんなサービスをどう提供するのか、必ず伝えておくようにしましょう。
店舗デザインがもたらす集客へのメリット3つ
さて、ここまで店舗をデザインする上で考えなければいけない事をお話してきましたが、「店舗デザイン」がもたらしてくれる集客へのメリットとはなんでしょう?
既出の事柄もありますが、あらためてまとめると下記になります。
・第一印象を良くしてくれる
・オペレーションや回転数を操作出来る
・サービスに付加価値をつけてくれる
下記、詳しく説明していきます。
第一印象を良くしてくれる
まず、あらゆるビジネス・コミュニケーションに共通することですが、第一印象は最も大事な事ですよね。
第一印象が良いと、信用度が高まりますし、第一印象はなかなか払拭できないとも言われています。
そして、店舗デザインというのは、そのお店の第一印象を判断する材料であり、そのお店のブランドそのものを表します。
ターゲットに好まれる店舗デザインをする事で、お客様の印象を良くし、その後の関係性をスムーズにしてくれます。
オペレーションや回転数を操作出来る
前項で、店内の回転数をあげたければ白い光、滞在時間を伸ばしたければオレンジの光を使うなど、環境をデザインする事で、お客様の行動をある程度操作出来ることを述べました。
つまり、自分のお店で狙うべき環境を作れれば、望ましい顧客の行動が見込めるという事です。
また、それに合わせて店内の動線を確保していくことで、スムーズなサービス提供が可能となり、顧客満足度を高める事が出来ます。
狙うべきターゲットとお店のレイアウト・環境・雰囲気がきちんとマッチしている事が、集客に繋がってくるのです。
サービスに付加価値をつけてくれる
例えば、お金をかけてなさそうな、雰囲気もいまいちなお店で、高級料理を食べたいと思う人はどれくらいいるでしょうか?
大抵の人は、おしゃれで高級感がある環境にいるからこそ、「このハイスペックな環境にいる自分」という自尊心を高められ、そこで過ごす時間に高いお金を払ってくれるのではないでしょうか。
逆に、「ちょっとひとりで気軽に飲みたい」という時に、一般の人は、見るからに高級そうなお店に入ろうとするでしょうか?
この場合はひっそりとこじんまりとした、隠れ家的な雰囲気のある飲み屋さんに惹かれる方のほうが多いのではないでしょうか。
そしてそこが居心地よければ、ついつい飲みすぎてしまうなんて事もあるのではないでしょうか。
このように、お店をきちんとデザインする事によって、そこに訪れる方にサービス以上の付加価値を感じてもらい、対価を払ってもらう事が出来るのです。
店舗デザインの費用はどのくらい?
店舗デザインの費用は、業種によって様々です。その違いの多くは、水道やガス、空調などの設備費用の違いや、作る部屋数から出てきます。
また、業種によっては、「居抜き物件」として、前に入居していたテナントの設備をそのまま受け継ぎやすかったり、なかなかそのまま使うのが難しかったりという違いもあります。
ここでは、スケルトン状態(コンクリート剥き出しで室内に何もない状態など)から内装工事をした際に、どれくらいの費用感で出来るのか、業種ごとにまとめました。
飲食店の内装
飲食店は、テナントの中では比較的たくさんの設備容量が必要になります。
水道やガスをたくさん使わなければいけないですし、換気・排気も他のテナントよりきちんとしなければいけません。
また、飲食業の厨房は防水処理・汚水対策を行うので、他のテナントよりも一坪あたりの工事単価が高くなります。
軽食程度の喫茶業ならそこまでの設備はいらない場合もありますが、火や水を大量に使う場合はやはり設備費は高くなります。
では一坪あたりの相場はどれくらいになるのか見てみましょう。
・カフェ、喫茶店:40万円〜60万円(/坪)
・レストラン、和食店:50万円〜80万円(/坪)
・焼肉店:100万円〜150万円(/坪)
金額の幅は、物件の種類やデザインによって変わります。
特に和食店などは、本物の木の素材を使ったり、意匠が凝ってたりすると、単価があがります。
ただ、飲食店は同じジャンルのお店だと結構居抜きで使えるものが多かったりするので、居抜き物件を狙うのもひとつの手です。
居抜き物件を利用する際は、場合によっては坪単価20万円〜30万円に抑えられる事もあります。
美容室の内装
美容室は、場合によっては特殊な配管工事が必要で、結構専門知識が必要な分野です。
設計や施工を内装業者にお願いする場合は、美容室の施工事例が豊富な業者に頼むのがいいでしょう。
そして、火は使いませんが、シャンプー台でお湯と水を使い、ドライヤーを使うので、水・ガス・電気の設備容量が多く必要です。
ひと昔前は坪20万円〜40万円の施工費が相場でしたが、近年は物価があがり、一般的な坪単価としては、40万円〜60万円は見ておいたほうがいいでしょう。
美容室は、そこで働く人の個性や流行が強く影響する職場なので、居抜きを使っても結局レイアウトを変更したりデザインを変更したりという事が多く、解体費用を含めると実はスケルトンから作ったほうが良かったという事も多々あります。
レイアウトが自分の働き方とマッチする居抜き物件が見つかれば、坪20万円〜30万円に抑えられる事もあります。
サロン・エステ系の内装
サロン・エステ系の内装は、飲食店や美容室に比べると設備工事が少ないので、これらの業種に比べると設備費用が抑えられる場合が多いです。
ただ、個室の数が多いとその分造作費用がかかってくるし、空調設備を充実させなければいけないので、そこが費用の上がり下がりに関係してきます。
一般的には坪35万円から50万円くらいの内装費用が相場ですが、こだわるポイントや個室数が多い場合は、坪60万円から70万円くらいになる場合もあります。
ヨガ・フォトなどのスタジオ系の内装
スタジオ系は、水道・ガス・電気などの設備容量も少なく済み、個室も比較的少ない為、内装費用が抑えられる事が多いです。
ただ、シャワー室を必要とするスタジオや、ホットヨガなど、特殊な設備が必要な場合は、内装費用もそれなりにかかります。
また、意匠としてデザインをこだわりたい場合は造作物も増えるので、当然内装費用が高くなります。相場はあくまで目安として考えましょう。
・フォトスタジオなど:15万円〜45万円(/坪)
・セミナー開催場などのオフィス系スタジオ:15万円〜60万円(/坪)※個室の個数による
・ヨガ、スポーツ系スタジオ:40万円〜70万円(/坪)
物販店の内装
物販店の内装費用はそれこそピンキリです。
陳列棚をオリジナルで作る場合や、造作のモニュメントなどを作る場合はかなり費用がかかりますし、全て既製品の什器で、店内の意匠をそこまで作り込まない場合は費用を抑えられます。
テナント内にトイレや給湯室を作るかなどによっても変わります。
坪15万円から作れる場合もありますし、作り込む場合は坪100万円くらいかかる場合もあります。
店舗デザイン費用を安くするためには?
複数業種の内装デザインの相場をお伝えしましたが、どの業種にも共通するのが、
・坪数が小さくなれば坪単価は割高になる
・オリジナルで作る造作物が少なければ少ないほど単価は下がる
という事です。
坪数が小さいと坪単価が割高になる理由は、例えば単純に言うと、10坪でも15坪でも同じ容量の機器、同じ人数の職人の手配が必要な際に、同じ金額を10坪で割るのと15坪で割るのとでは、10坪のほうが割高になるという理屈です。
たとえ5坪のお店だろうと、電気工事、水道工事、空調工事など、工事で必要最低限手配しなければいけない事項があるので、10坪のお店とそこまで変わらない内装費用がかかってきます。
物件を選ぶ際、立地や家賃が最重要項目になってくると思いますが、どの物件にするか迷っている時は、狭い物件で内装の初期費用をおさえようとするよりも、どちらかというと多少広めの物件にして、席数や商品の陳列数を増やすほうがおすすめです。
造作物については、オリジナルでデザインして作ると、当然大量生産の既製品より高くなります。
予算があまりない場合は、既製品なども上手く組み合わせて使っていくのがおすすめです。
おしゃれな店舗デザインの事例3つ【外観・内観】
さて、ここまでデザインの基本的な考えや費用の相場を説明してきましたが、次は実際のデザイン事例をご紹介します。
店舗の外観デザイン事例3つ
①外装施工
西海岸風の雰囲気を演出しています。
建物の外観が店舗のイメージに合わず、予算に余裕がある場合は、管理会社と相談して外装工事をするのもおすすめです。
②既製品装飾
テナントの外部で使用可能な区画が広い場合は、観葉植物やテーブル、看板など、オリジナルの装飾を置いて雰囲気を作る事も可能です。外装工事にお金をかけなくても、このように既製品で雰囲気作りが出来ます。
③アプローチデザイン
建築物の縛りで、外装工事に制限がある時、例えば建物内の通路や階段など、テナントへのアプローチで雰囲気を作る事も出来ます。
この場合は、テナントへ続く階段をデザインして店舗ロゴなどを入れています。
店舗の内装デザイン事例3つ
①オフィス兼コワーキングスペース
利用する方の年齢・性別を考慮し、作業する方のモチベーションを高めてくれるよう、少し高級な大人の遊び場感を演出しています。
②和食ダイニング
ミシュランにも認定されている、「和食隠れ家ダイニング」がテーマのお店。お料理がきちんと見えるよう、テーブルは光で照らされていますが、直接人には光が当たらないようにしている為、リラックス出来る「隠れ家」感があります。
③美容室
ファミリー層が多い地域で、完全個室制で運営している美容室です。建物の中に建物があるような、遊び心のあるデザインを取り入れています。
小さい店舗の店舗デザイン事例
次に小さい店舗のデザイン事例を紹介します。小さい店舗は業種によっては動線が設計しづらかったりしますが、なるべく取捨選択をして、シンプルな動きを考えてあげるのがおすすめです。
10坪・15坪の店舗デザイン事例
①つけ蕎麦屋 (10坪)
テーブルは大テーブルひとつにして、無駄なスペースを排除しています。
回転の速いお蕎麦屋さんだからこそ出来る、1席のスペースを必要最小限にした設計です。
②アパレル店(12坪)
商品そのものを映えさせるよう、内装はかなりシンプルで、建物の躯体をそのまま上手く使って、雰囲気を出しています。
このように作る部分を少なく、もとの建物を上手く活用出来れば内装費用も少なくなります。
③美容室(14坪)
14坪の美容室ですが、坪数の割にかなり空間を広く使っています。収納類はほとんどスタッフのみ立ち入るエリアに集約されていて、お客様がいるエリアに収納がほとんどありません。すっきりした印象を与えると同時に、スペース節約になる、うまい事例です。
テイクアウト専門店の店舗デザイン事例
こちらの事例はいずれも美容室に隣接したテイクアウト専門店です。
美容室の出入り口とは別に窓口を設けて商品を受け渡ししています。
テイクアウト用に設けているスペースはどちらも6㎡程度、提供商品はコーヒーやスムージーなどです。
店舗デザイン・内装の相談はWHATS incへ
これまで事例含め、店舗デザインの基本情報をそれぞれご説明してきましたが、最後にまとめると、「いかにお客様と、そこで働くスタッフの事を考えてデザインするか」という事が、良い店舗デザインに繋がります。
自分で持つお店の事は自分である程度考えなければいけませんが、専門的な知識や経験は、専門家に相談するのが一番の近道ですね。
WHATS Incでは、店舗のデザイン設計と施工を100件以上行ってきました。そして施工してきたお店で10年以内に閉店したお店は1割以下です。
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